翻訳4種

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773. 翻訳4種

ユーザ名(Username): ケオラエス
日時: 2011/8/12(11:20)

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先生、みなさん、こんにちは。

先日来、ある本を読んでいて、「分業」とか「交換」と
いうことが、人間社会を組み立てるのに基本的な役割を
果たしているのだと知って、うれしくなりました。

うれしい、と言うのは、私はこういう分野(経済学?)に
まったくうとく、オンチとさえ言える位だからです。
多分かしこい高校生くらいだったら分かることなのでしょう。

私が読んでいた(まだ読んでいる)本は翻訳で、
『繁栄―明日を切り拓くための人類10万年史』マット・リドレー
2010初版 早川書房、という本です。

オリジナルは
THE RATIONAL OPTIMIST - How Prosperity Evolves
by Matt Ridley, 2010 Copyright
です。私は Kindle の sample で最初の方を手に入れました。

さて、この『繁栄』のエピグラフ、というんですか、本の最初に
引用されている文章がありました。はじめ読み過ごしていたのですが、
あらためて注意してみると、有名なアダム・スミス『国富論』の
1節でした。

アダム・スミスが有名な人とは知っていましたが、もちろん実際に
その本を読んだことはありませんでした。

『繁栄』のエピグラフは後回しにして、この部分の翻訳はいろいろ
出ているようです。

A)
これほどおおくの利益がひきだされる、この分業は、もともとは、
それが引き起こす一般的富裕を予測し意図する、何らかの人間の知恵の
けっか(ママ)ではない。それは、人間の本性のなかにある一定の性向の、
つまり、あるものを他のものと、取引し交易し交換する性向の、きわめて
おそく漸進的ではあるが必然的な帰結であって、その性向は、いまいった
広汎な効用を考慮にいれてはいないのである。

この翻訳をされた方は、「Adam Smith 研究の世界的第一人者」で
名古屋大学名誉教授、日本学士院会員だそうです。
オーマイガー(笑)ですね。なんともコメントのしようがありません。
学士院会員ともなると、こういう難解な(私どもの言葉では支離滅裂な)
日本語でも分かってしまうのでしょう!

B)
こんなにも多くの利益を生むこの分業は、もともと、それによって生じる
社会全般の富裕を予見し意図した人間の知恵の所産ではない。分業というものは、
こうした広い範囲にわたる有用性には無頓着な、人間の本性上のある性向、
すなわち、ある物を他の物と取引し、交易し、交換しようとする性向の、
緩慢で漸進的ではあるが、必然的な帰結なのである。

う〜ん、まあ少しは…。このBさんは、経済学者で東大総長を務めた方で
やはり日本学士院の会員だそうです。

この方の翻訳は、最初と最後をつなげると意味がわかります。
この分業は…人間の知恵の所産ではない。分業というものは…
人間の…交換しようとする性向…必然的な帰結なのである。

C)
分業からはじつに多くの利益が得られるのだが、そもそもこの分業が
始まったのは、それによって世の中全体が豊かになることを人間の叡智が
見越してその実現を意図したからではない。それほど広範な恩恵に
与れる(あずかれる)などとは誰も思っていなかった。分業は、人間の持つ、
ある性向のせいで、きわめてゆっくりと、わずかずつではあるが、必然的に
達成されたのだ。それは、物と物とを交換するという性向である。

これが『繁栄』のエピグラフの翻訳です。これだったら、まあなんとか
分かるのではないでしょうか。私自身は分業や交換にピカッときていた
ので、なんなく理解できました。

この訳者は、大田直子・鍛原多恵子・柴田裕之です。どなたが該当の
部分を翻訳されたのかはわかりません。

D)
分業はこのようにきわめて大きな利点を生み出すものだが、分業が
はじまったのは、知恵のある人がこうすれば全員が豊かになれると考え、
計画したからではない。これほど大きな利点があるとは誰も考えて
いなかったが、人間にはものを交換しあう性質があり、その結果、
ごくゆっくりとではあるが、必然的に分業が進んできたのだ。

バンザーイですね!翻訳によってこんなに違ってしまうとは!
アダム・スミスはこの本を研究論文として書いたのではなく、
一般向けの本として書いたそうです。だとすれば、この程度には
分かりやすかったはずですよね。ようやく日本語を読んでいる
感じになりました。やはり、プロの翻訳家はすごいですね。

ひるがえって、研究者ならそれもいいのですが、あまり変な
翻訳を出すのは控えてほしいですね。見ただけで嫌になって
しまうのでは、害を流しているとさえ言えるでしょう。

これは、酒井先生のお友達の山岡洋一さんの翻訳です。
拍手〜です。ありがとうございます(自分のアタマが
不具合なわけではないとわかりました(笑))。

独白(なんだか、方向とやり方を間違えましたね。多読で
千万語くらい読んで、それから専門の本を英英を引きながら
でも読めば、どうということはなかったんでしょうね。
権威というのは、今度の原発事故でもわかりましたが、
恐ろしい存在です。記者会見で泣いたりする人もいましたがね。)

あ、original は、

This division of labour, from which so many advantages are derived,
is not originally the effect of any human wisdom, which foresees and
intends that general opulence to which it gives occasion. It is the
necessary, though very slow and gradual, consequence of a certain
propensity in human nature which has in view no such extensive utility;
the propensity to truck, barter, and exchange one thing for another.

Happy reading !!


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